大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和29年(あ)2055号 判決

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人森岡三八の上告趣意(後記)第一点及び被告人の上告趣意(後記)一のうち同趣旨の論旨について。

所論は、検察官が当初窃盗として起訴した公訴事実に、後に賍物寄蔵の訴因及び罰条を予備的に追加し、第一審がこの予備的訴因について被告人に有罪を言い渡し、原審またこれを是認したことをもって刑訴法違反であると主張するに帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして本件の主たる訴因である「被告人は昭和二十八年九月二十一日午前一時頃京都市下京区大宮通り丹波口下る三丁目百二十二番地高木太郎方前路上に於て同人所有のリヤカー一台(時価一万円位)を窃取した」という事実と、追加された予備的訴因である「被告人は昭和二十八年九月二十一日午前一時頃京都市下京区七条大宮南入路上で知人藤原ヨシヲより、その盗賍たるの情を知りながら、リヤカー一台(時価一万円位)を預りもって賍物の寄蔵をなした」という事実との間には、日時の同一、場所的関係の近接性及び不法に領得された高木太郎所有のリヤカー一台に被告人が関与したという事実に変りはないから、右両訴因の間の基本的事実関係は、その同一性を失うものでないと解するを相当とする。従って第一審判決及びこれを是認した原判決には訴訟法違反も認められない。論旨は理由がない。

弁護人の論旨第二点について。

所論は、原判決の違憲を主張するけれども、原審で主張なく判断もなかった事項であるから、論旨は適法な理由とならない。

弁護人の論旨第三点及び被告人の他の論旨について。

所論は結局事実誤認の主張であって刑訴四〇五条の上告理由に当らない。その他弁護人の論旨中憲法三六条を引用する部分は、その実質は量刑不当の論旨に過ぎないから適法な上告理由とならない。

その他記録を調べても刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。

よって同四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例